リウマチ性多発筋痛症について
リウマチ性多発筋痛症は50歳以上、特に70〜80歳の中高年に発症する炎症性疾患であり、首、肩、腰、太ももなどの体幹近位部へ激しい痛みとこわばりを引き起こします。この疾患は、血管炎の一種である巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)と密接な関係があり、約15-20%の患者さんに合併することが知られています。50歳代後半から70歳代の女性に特に多く見られ、男性の約2倍の発症率を示します。
原因とリスクファクター
正確な発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境因子の複合的な作用により、免疫系の異常が生じることが原因と考えられています。
症状
リウマチ性多発筋痛症は、特に朝の起床時に激しい筋肉の痛みとこわばりを経験します。症状は主に首、肩甲骨周囲、腰部、太ももなどの体幹に近い部分に現れ、「肩が上がらない」「腰が痛くて起き上がれない」といった日常動作の著しい制限を伴います。これらの症状は通常、左右対称に発生し、朝のこわばりは30分から数時間続くことが一般的です。
発熱、倦怠感、食欲不振、体重減少などの全身症状も併発し、急激に日常生活の質が低下します。
また、巨細胞性動脈炎を合併することがあり、視力障害や頭痛が出現します。失明につながることがあるため特に注意が必要です。
診断方法
まずは、症状の経過、痛みの部位、こわばりの有無を詳しく確認します。
血液検査では、炎症マーカーである赤血球沈降速度(ESR)やCRPの著明な上昇を確認し、リウマトイド因子や抗CCP抗体などの自己抗体の検査でその他膠原病との鑑別を行います。
画像検査では、超音波検査やMRIを用いて肩関節や股関節周囲の滑膜炎や腱鞘炎を評価します。
また、巨細胞性動脈炎の合併を除外するため、必要に応じて側頭動脈の触診や超音波検査も実施します。
治療の方針
治療は、ステロイド(プレドニゾロン)が第一選択薬として用いられ、多くの場合で1週間以内に症状改善が期待できます。初期治療では、通常1日あたり15-20mgのプレドニゾロンから開始し、症状の改善に応じて徐々に減量していきます。
ステロイド単独での治療が困難な場合は、メトトレキサート(MTX)の併用療法を検討します。メトトレキサートは、関節リウマチの治療で広く使用されている免疫抑制薬であり、ステロイドの減量効果や再燃防止効果が期待されます。
また、ステロイドの長期使用に伴う副作用(骨粗鬆症、糖尿病、感染症リスクの増加など)を最小限に抑えるため、ビタミンD製剤の併用、定期的な骨密度検査、血糖値のモニタリングなどの包括的な管理を行います。
自己チェックリスト
- 朝、肩や腰がこわばって30分以上続きますか?
- 両側の肩や太ももに持続する痛みがありますか?
- 微熱や全身のだるさが続いていませんか?
- 体重減少や食欲低下がありますか?
- 症状が急激に悪化し、数週間から数ヶ月で著しく活動量が低下しましたか?
これらの症状が複数当てはまる場合は、リウマチ性多発筋痛症の可能性があります。早めに受診することで、適切な治療を開始できます。
まとめ
リウマチ性多発筋痛症は、適切な診断と治療により症状の劇的な改善が期待できる疾患です。ステロイドを中心とした治療は非常に効果的である一方、長期的な管理と副作用予防が重要です。お困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
