脂肪肝
脂肪肝は、健康診断でよく指摘される一般的な疾患であり、肝臓に中性脂肪が異常に蓄積した状態のことです。特に40代以降の男性や閉経後の女性に多く見られ、食生活の欧米化や運動不足、肥満の増加に伴い、患者数は増加傾向にあります。
多くは自覚症状がないまま進行しますが、放置すると肝炎・肝硬変・肝がんへと進行するリスクがあります。さらに、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を合併しやすいことも知られています。
脂肪肝を適切に管理することで、肝硬変や肝がんのリスクを大幅に減らすことができるため、早期発見と継続した治療が非常に重要です。
原因とリスクファクター
脂肪肝は、大きく「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」に分類されます。
アルコール性脂肪肝
過度の飲酒が原因で起こる脂肪肝です。主なリスクファクターとして、以下が挙げられます。
- 継続的な大量飲酒(男性:1日エタノール換算30g以上、女性:20g以上)
- 長期間の飲酒習慣
- 遺伝的なアルコール代謝能力の違い
- 栄養バランスの偏り
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)
アルコールをほとんど飲まない方に起こる脂肪肝で、近年急増しています。主な原因として、以下が挙げられます。
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
- 過度の糖質・脂質摂取
- 運動不足
- 急激な体重減少
- 遺伝的素因
続発性脂肪肝
薬剤や他の病気が原因で起こる脂肪肝です。主な原因として、ステロイド薬の長期使用、一部の抗がん剤、甲状腺機能低下症、クッシング症候群などがあります。
症状
脂肪肝そのものは、ほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断で偶然見つかることが多い病気です。
ただし、脂肪肝が進行すると、以下のような問題が起こることがあります。
- 慢性肝炎(NASH)への進行: 倦怠感、食欲不振、右上腹部の違和感など
- 肝硬変: 黄疸、腹水、むくみ、出血傾向など
- 肝がん: 体重減少、腹部腫瘤など
※非アルコール性脂肪肝の約10〜20%は、炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進行し、さらに肝硬変・肝がんへと進展するリスクがあります。
脂肪肝が引き起こす合併症
- 心血管疾患: 脂肪肝は動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
- メタボリックシンドローム:脂肪肝は高血圧、糖尿病、脂質異常症と合併しやすく、これらが重なることで心血管疾患のリスクがさらに高まります。
- 慢性腎臓病:脂肪肝は腎機能低下のリスク因子でもあります。
診断方法
脂肪肝は、血液検査や画像検査、問診を組み合わせて総合的に評価します。
- 問診
• 飲酒量・頻度
• 体重変化、食習慣、運動習慣
• 併存疾患(糖尿病、脂質異常症、高血圧など)
• 服用薬(脂肪肝の背景評価のため) - 血液検査
• 肝機能(AST/ALT、γ-GTPなど)
• 糖代謝(血糖、HbA1c)
• 脂質(コレステロール、中性脂肪など)
• 必要に応じて肝炎ウイルスなど - 画像検査
• 腹部超音波検査:最も一般的な検査。肝臓の輝度増加(白く見える)を確認します
• 腹部CT検査:より詳細な脂肪沈着の評価が可能です
• MRI検査:脂肪量の定量評価や肝硬度の測定が可能です
治療の方針
脂肪肝の治療の目的は、「肝炎・肝硬変・肝がんへの進行を防ぎ、将来の心血管疾患を予防すること」にあります。
脂肪肝の治療は、生活習慣の改善を基本とし、必要に応じて薬物療法を行います。
生活習慣の改善
| 項目 | 具体的な目標と方法 |
| 食事療法 | 総カロリーを適正にしましょう(標準体重×25〜30kcal)。糖質(特に果糖を含む清涼飲料水、菓子類)を控えましょう。脂質は適量を心がけ、特にトランス脂肪酸や飽和脂肪酸を減らしましょう。タンパク質(魚、大豆製品、鶏肉など)を適切に摂取しましょう。野菜、海藻、きのこ類を積極的に摂取しましょう。1日3食、規則正しく食べ、夜遅い食事は控えましょう。 |
| 体重管理 | BMI 25未満を目指しましょう。特に肥満の方は、現在の体重から3〜6ヶ月で5〜10%の減量を目標にしましょう。急激な減量は肝臓に負担をかけるため、月に1〜2kg程度の緩やかな減量を心がけましょう。 |
| 運動 | 1日30分以上、週に150分以上の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなど)を目標としましょう。筋力トレーニングも週2回程度取り入れると効果的です。日常生活でもこまめに体を動かし、座りっぱなしを避けましょう。 |
| 節酒・禁酒 | アルコール性脂肪肝の場合は禁酒が必須です。非アルコール性脂肪肝でも、飲酒は控えることが望ましいです。飲酒する場合は、男性で1日エタノール換算20g以下(日本酒1合、ビール500ml、ワイングラス2杯程度)、女性ではその半分程度にとどめましょう。週に2日以上の休肝日を設けましょう。 |
薬物療法
生活習慣の改善だけでは十分に改善しない場合や、肝炎が進行している場合、合併症がある場合に検討します。
現時点で脂肪肝に対する確立された治療薬はありませんが、以下のような薬剤が使用されることがあります。
- ビタミンE製剤:抗酸化作用により肝機能改善が期待されます
- 糖尿病治療薬:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など、体重減少効果のある薬剤が検討されることがあります
- 脂質異常症治療薬:スタチン系薬剤など、合併する脂質異常症の治療を行います
日常生活の注意点
- 定期的に血液検査と画像検査を受け、肝機能と脂肪肝の状態を確認する
- 食事内容を記録し、食生活を見直す習慣をつける
- 体重を定期的に測定し、記録する
- 十分な睡眠をとり、ストレスを溜めない
- 喫煙は肝臓に悪影響を与えるため、禁煙を心がける
- 他の生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)も併せて管理する
自己チェックリスト
以下の項目に当てはまる方は、脂肪肝のリスクが高い、またはすでに脂肪肝の可能性があります。
- 健康診断で「肝機能異常」や「脂肪肝」を指摘された
- BMI 25以上の肥満がある
- 内臓脂肪が多い(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)
- お酒をよく飲む(1日日本酒1合以上を週に5日以上など)
- 甘い飲み物や菓子類をよく摂取する
- 運動不足である
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症を指摘されたことがある
- 家族に脂肪肝や肝臓病の人がいる
- 倦怠感や右上腹部の違和感がある
当てはまる方は、一度医療機関で血液検査と腹部超音波検査を受け、肝臓の状態を評価することをおすすめします。
まとめ
脂肪肝は症状が乏しい一方で、放置すると脂肪肝炎・肝硬変・肝がんへ進行することがあります。
しかし、早期から食事・運動など生活習慣を整えることで改善が期待でき、特に体重減少は大きな効果があります。
健康診断で指摘された方は、ご相談ください。
参考
• 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-033
• 厚生労働省「アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-011
• 厚生労働省「アルコールと肝臓病」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-002

