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血尿とは


血尿とは、尿の中に血液が混じっている状態を指します。通常、健康な尿には血液は含まれていませんが、腎臓や尿路に異常が生じると、尿に血液が混入することがあります。血尿には大きく分けて、目で見てわかる「肉眼的血尿」と、顕微鏡検査でのみ確認できる「顕微鏡的血尿」の二種類があります。

肉眼的血尿について

肉眼的血尿の場合、尿が赤色、褐色、あるいは黒褐色に変色し、時には血の塊が尿中に含まれることもあります。このような症状は、比較的多量の血液が尿に混じっていることを意味し、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿路のどこかに明らかな出血源が存在している可能性が高いため、早急に医療機関を受診することが重要です。放置すると出血が持続し、原因となる病気が進行する恐れがあります。

顕微鏡的血尿について

顕微鏡的血尿は、見た目には異常がなく、定期健診や学校検尿、職場の健康診断で初めて指摘されることが多いことが特徴です。自覚症状がないため放置されやすいですが、見えないところで進行している疾患のサインである可能性があります。特に、尿検査で尿潜血と尿蛋白が同時に陽性の場合、糸球体腎炎など腎臓病が原因である可能性が高いため、より詳しい検査が必要です。健康診断で尿潜血を指摘された方は、専門的な検査を早めに受けることが推奨されます。

血尿の主な原因

血尿を引き起こす病気には、以下のようなものがあります。

  • 膀胱炎:膀胱に炎症が起こり、排尿時の痛みや頻尿を伴いながら血尿が出ることがあります
  • 結石:腎臓や尿管にできた結石が粘膜を傷つけ、尿に血が混じります。腰痛やわき腹の痛みを伴うこともあります。
  • 尿路感染症・腎盂腎炎:発熱、背部痛、悪寒を伴いながら血尿が出ることがあります。
  • 腎臓病:IgA腎症、急性糸球体腎炎、慢性腎炎など、腎臓のろ過機能を担う糸球体に異常が生じると、血尿が現れます。
  • 腫瘍:膀胱がん、腎がん、尿管がんなど、悪性腫瘍が原因の場合もあります。特に中高年で血尿が見られる場合は注意が必要です。
  • その他:激しい運動、過度なアルコール摂取、脱水、身体の冷え、食事内容の偏り、一部の薬剤なども血尿の原因になることがあります。

血尿を放置するリスク

血尿が一時的で自然に治まったとしても、背景に重大な病気が潜んでいる可能性は否定できません。特に、腎臓病や泌尿器系の腫瘍が原因の場合、早期発見・早期治療がその後の予後に大きく影響します。自覚症状が乏しいため、健康診断で指摘を受けた際は自己判断せずに専門医を受診することが重要です。

血尿の検査と治療

血尿の原因を調べるためには、いくつかの検査を組み合わせて診断します。

  • 尿検査:尿中の赤血球数や赤血球の形態を調べ、出血の原因部位を推定します。
  • 血液検査:腎機能、炎症の有無、感染の指標を確認します。
  • 画像検査:腎臓や膀胱の形態異常や結石、腫瘍の有無を確認するために、超音波検査やCT検査が行われます。
  • 膀胱鏡検査:必要に応じて、膀胱内を直接観察し病変を確認します。

治療は原因疾患に応じて異なります。感染症が原因の場合は抗菌薬、結石の場合は自然排石を促す薬や手術、腫瘍の場合は外科的治療や薬物療法が必要です。腎臓病の場合には、生活習慣の見直しや薬物療法、定期的な経過観察が行われます。

まとめ

血尿は自覚症状がないことも多いですが、重大な疾患のサインである可能性があります。少しでも不安がある方、健康診断で尿潜血を指摘された方、突然の血尿に気づいた方は、ぜひお早めにご相談ください。

  1. 日本腎臓学会「腎臓検診でわかること-一般のみなさまへ」
  2. 日本臨床検査専門医会「尿蛋白、尿糖、尿潜血の検査について」
  3. 日本泌尿器科学会「尿に血が混じる。血尿を指摘された」